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意志の塊


   (寫眞をクリックすると拡大します。)

倉庫街の一番奥に立つサイロ。
大量の飼料を貯蔵するためだけに造られたものなのに、本来の目的とは別の、強靭な意志の力を感じさせるのはなぜだろう。

窓のない円柱の無表情さ。
コンクリート塊の巨大な重量。

美醜に関する論評を許さない威圧感。
現世に出現した古代遺跡のような違和感。

これが全体主義のモニュメント、あるいは独裁者の祭壇のように見えてしまうのは、ここが旧軍港の倉庫街だからなのであろうか。

BGM ・・・ SF交響ファンタジー第1番 (伊福部昭)
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ネット社会の原風景


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今でこそ電話は一人一台の時代だが、少し前までは一家に一台だったし、さらにその前には、一家に一台とすら言えない時代もあった。

きっとそんな石器時代に建てられたに違いないこのアパートに、同学年の遊び仲間たちが住んでいた。
屋内には、電話の配線もなければ、差込口もついていない。
自宅に電話を置きたい人は、電話線を外から直接引いてくるしかなかった。
やがて、一家に一台が当たり前になる頃には、各家庭を目がけて伸びる無数の電話線が、中庭の上空を覆うこととなった。

電話線に乗って、誰かの耳に届けたい言葉が、部屋から外に流れ出して行くさまが見えるような気がする。
話す言葉が直ちに電波となって、空気中に雲散霧消していくような印象のモバイル。
片や電話線には、言葉と気持ちを塊のままの形で通話の相手に届ける力があったのではなかったか。

数年前、隣接する工場が閉鎖され、社宅として使われていたこのアパートは廃墟となった。
抜け殻となった廃墟がどんどん干からびていく中にあって、鳥よけネットのように張り巡らされた電話線だけが、かつての住人たちの暮らしぶりを、いつまでも生々しく物語っているように感じられる。

BGM ・・・ 電話線 (矢野顕子)

参道の奥の灯


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小さな漁港と、夏になれば海水浴客がやって来る砂浜があるだけの集落。
風が吹く真冬の夕暮れ刻に、表を歩く人影はまったく見当たらない。

海岸に面した鳥居をくぐり、参道をしばらく進んで行くと、社殿が見えてきた。
つい先ほど、海の向こうに日が沈んだばかりの森の中では、早くも一日が終わろうとしている。

神社は、静かに電球一つ灯して、訪れる人を待つ。
どんな人が、真冬の夜の寒さを忍んでお参りに来るのか。
その人は、真冬の夜の寒さを忍んで何を祈りに来るのか。

祈りたい時に祈れる、身近な場所。

日本人の多くは、そんな場所の存在を忘れてしまっているかもしれないが、きっと国内のあちらこちらで、まだまだ大事にしている人たちがいるに違いない。

BGM ・・・ Syrinx (ドビュッシー)

廃屋の血管


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人家としての役目を終え、眠りについた廃屋。
この家は死んでいるのか、生きているのか。

裏の林から魔の手を伸ばしてきた蔓植物は、廃屋をジワジワと締め上げ、遂には窒息死に至らしめたのか。
あるいは、皮膚に浮き出る血管のように、廃屋への栄養補給を続けながら、その延命を助けているのか。

BGM ・・・ Second Marriage (後藤次利)

隠されたカテドラル


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商業施設の裏に回ってみると、壁面がアコーディオン・カーテンのような凹凸を見せていた。
裏山の崖との間にできた狭くて高い空間は、正午になっても薄暗い。
木々の隙間を縫って辛うじて差し込んでくる陽光が、壁面に複雑な影を落とす。

近くでイベントが開催されているためなのか、商業施設の前は相当な人通りだった。
そこから一歩入って、配管や配線、排気筒が剥き出しになったこの場所を訪れる者はいない。
聞こえるのは蝉の声だけ。

そんな忘れられた空間に、教会が隠されていたとは。

聳え立つ壁面は、ゴシック様式の教会を模したものだった。
高みから差し込む光は、ステンドグラスを通って礼拝堂内に降り注ぐ光を代替するものだった。

ここには司祭も信者もいないし、ここで祈りを捧げる者はない。
こんな、誰のために存在するのかわからない教会が、それでも確かに存在しているということを、どう考えれば良いのだろうか。

BGM ・・・ トッカータ ニ短調 BuxWV155 (ブクステフーデ)

Yellow Magic


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今から30年以上前、メディテーションというスピリチュアル系の雑誌があった。
瞑想音楽特集の号では、細野晴臣と高橋幸宏が対談し、長髪の坂本龍一が別の座談会に加わっていた。
後にイエロー・マジック・オーケストラを結成することになる3人が、この時、既に一冊の雑誌の中で顔を揃えているのは、単なる偶然とは思えない。

同じ号の中に、一枚の写真が見開きで掲載されているページがあった。
写っていたのは、荒野にポツンと置かれた変電設備のような施設。
およそ精神世界とは縁がなさそうな無機的な風景写真なのに、なぜかその写真はオカルティックな雑誌の雰囲気に十分馴染んでいた。
いやそれどころかむしろ、他の記事の内容は忘れてしまったが、その写真のことだけは今でも鮮明に思い出せるほど、強烈な妖気を放っていた。

山や海を眺め、そこに神々の棲み家を見い出してきた先祖たち。
その血を受け継ぐ我々も、何気ない風景の中に神の存在を感知することがあるのかもしれない。
簡単に見過ごしてしまうことができない風景に出合った時、少しばかり佇んで瞑想してみると何が起きるのだろう。

急ぎ足でやって来た秋が、そこら中に黄色い花を撒き散らかしている。
標識や鉄柵、踏切や放置された鉄道車両の色彩とシンクロして、視界をイエロー・マジックに染め上げる。
この風景の中にも、何か神々しいもの、あるいは凶々しいものが存在するのかどうか。
今はまだわからない。

BGM ・・・ Castalia (イエロー・マジック・オーケストラ)
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